頻尿が起きるメカニズム~原因・症状で異なる対策と治療
頻尿とは文字どおり「頻繁(ひんぱん)な尿」、すなわち「排尿の回数が、生活の質を低下させるほどに異常に多くなる現象」を指し、「排尿障害」の一症状とされています。
成人の排尿回数は平均で一日7回程度、幅としては一日3~8回程度、また排出量としては一日におよそ1,500ml程度(一回の排出量は約150~250ml)が普通とされています。
この普通とされる範囲を多少はずれたとしても、本人の生活全般で特に支障をきたしていなければ、治療の必要はありません。
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ただし仕事に差し支えるとか、通勤時や学校の試験時にトイレが近くなって困るといったように、日常の生活の質を大きく損ないかねない状況のときは、治療のためまず泌尿器科を訪れるべきでしょう。
排尿はそもそも、「膀胱の筋肉」や「尿道括約筋」などの筋肉によってコントロールされるものです。
尿意は脊髄を経て脳に伝えられ、「トイレに行きたい」という感覚が生じるわけですが、そのあと最終的に脳から「おしっこをするぞ」という命令が膀胱・尿道に伝えられます。
すると膀胱の筋肉の収縮と尿道括約筋の弛緩が起き、膀胱に溜められた尿が排泄されるメカニズムになっています。
このメカニズムになんらかの狂いが生じると、膀胱の筋肉の収縮が過剰になり、頻尿などの「排尿障害」や、尿漏れ(尿失禁)などの「蓄尿障害」につながっていきます。
排尿障害には、尿が出にくくなる「排尿困難」や、尿が出るときに痛い「排尿時痛」もありますが、頻尿も排尿障害の主な症状のひとつというわけです。
ただし頻尿で注意しておきたいことは、「一言で頻尿といっても、どんな症状を呈しているか、またその原因がどこにあるかによっても対策や治療法が異なってくる」点です。
頻尿の原因は多様であり、たとえば神経性の頻尿の場合は、結果的に泌尿器科よりも心療内科における治療のほうが適切なケースもあります。
したがって原因特定のためにも、また症状が慢性化・重篤化することを避けるためにも、できるだけ早期に泌尿器科を受診するようにしたいものです。
頻尿の原因はさまざま~診察による早期発見が第一歩
頻尿の原因は、大きくは「過活動膀胱(かかつどうぼうこう、OAB)」「膀胱炎」「間質性膀胱炎」などに分かれます。
これに加えて、前立腺肥大症や子宮がんなど、頻尿が「他の病気の一症状」としてあらわれるケースもあります。
このような場合に手をこまねいていると、深刻な事態に進む可能性もでてきますので注意が必要です。
まず「過活動膀胱(OAB)」とは、急に我慢できないほどの強い尿意を感じることを主な症状とする、広範囲の排尿障害を指します。
「夜間頻尿」や切迫性の「尿漏れ(尿失禁)」を伴うこともあります。
この過活動膀胱は比較的最近定義された概念で、その原因には「神経性」のものと「非神経性」のものがあります。
またこの後でご説明する「間質性膀胱炎」が、過活動膀胱に含めて説明されることもあります。
過活動膀胱の原因は明確に特定されていませんが、「加齢」が主な原因のひとつとされており、40歳以上の8人に1人、患者数にして800万人以上に達するという調査結果もあるようです。
主に50歳以上の男性の病気として広く知られる「前立腺肥大症」患者の5~7割が、この過活動膀胱(OAB)の症状を有しているとされます。
「膀胱炎」は、泌尿器科の病気のなかでもっとも多いもののひとつです。
細菌感染や結核性のもの、あるいは膀胱に結石ができて急性膀胱炎が慢性化したものなど、膀胱炎の原因はさまざまに分かれています。
特に女性は、男性よりも尿道が短いという構造上の面からさまざまな細菌に感染しやすく、細菌性の急性膀胱炎に何度もかかる人もそう珍しくありません。
女性が頻尿や排尿時の痛みを自覚したときは、まずこの細菌性の急性膀胱炎を疑ってかかる必要があります。
日頃から健康で粘膜が強い人は膀胱炎にはかかりにくく、またかかってたとしても治りやすいものですが、のどの炎症や口内炎を起こしがちな粘膜の弱い人や、体の抵抗力が衰えている・体が冷えやすい・免疫力が落ちているといった人などは、膀胱炎を発病しやすくなります。
治療という面からは、下腹部を温めながら安静にして体力の回復につとめつつ、必要に応じて抗生物質や抗菌薬などの投薬治療を行うことによって、炎症を抑え治していくことができます。
ただし細菌が腎臓に達してしまい急性腎盂炎(じんうえん)を併発したり、繰り返しかかっているうちに慢性膀胱炎になってしまう恐れもありますので、やはり早い段階で泌尿器科の診察を受けることが賢明です。
「間質性膀胱炎」は原因がまだはっきり特定されていませんが、膀胱の筋肉と粘膜の間の「間質」と呼ばれる部分に炎症が起きる病気です。下腹部の痛みや違和感・頻尿などが主な症状となります。
患者の9割が女性とされますが、まれに男性もかかる場合があります。
症状が軽い場合には通常の膀胱炎と同じく、安静にして膀胱訓練などを行うだけで治癒するケースもありますが、重篤な場合は専門医による本格的な治療が必要となります。
なお、間質性膀胱炎における全国の専門医は、 日本間質性膀胱炎研究会 のホームページからも検索が可能です。
頻尿は、上でみたとおり「膀胱の炎症」などが原因となる一方で、膀胱そのものに器質的な問題がなくても、膀胱周辺の内臓に腫瘍ができて膀胱を圧迫し、それにより膀胱が尿を溜めておける余地が弱まって頻尿となるケースがあります。
「前立腺肥大症」や「前立腺がん」は、膀胱の下にある前立腺が肥大したり、あるいはがんが進行することによって、膀胱や尿道が圧迫されるものです。
これらの病気においては頻尿だけでなく、排尿時の痛みや下腹部の違和感などの症状を伴うことが多くあります。
前立腺肥大症は50歳を過ぎた男性がとくに注意したい病気のひとつで、「中高年の5人に1人は前立腺肥大症患者」とすらいわれるほどです。
頻尿の症状がこれらの重篤な病気のサインとなっている可能性もありますので、いずれにせよ早期発見・早期治療を心がけたいところです。
その他にも、脳血管障害(脳梗塞・脳卒中)に起因して、排尿を調節する神経系が障害を起こし頻尿となる場合もありますし、また臓器の器質面ではいっさい問題がなくても、精神的な緊張や心理的要因で頻尿の症状を呈する場合もあります(神経性頻尿)。
神経性頻尿は、むしろ心療内科において抗うつ薬などの投与や自律訓練法を行うことが、適した治療となるケースもあります。
このように頻尿といっても、その原因は様々であり、また重大な病気のサインであるケースも考えられるので、早い段階で専門医の診察を受けて症状を特定することが大切になります。
治療の方向性も、症状の特定によってまったく変わってくる可能性があるからです。
頻尿の治療~投薬治療の概要・生活改善を通じた対策など
頻尿への対策・治療の方向性として、「下腹部を温めつつ安静にする」「アルコール類や刺激物を控える」「仕事の疲れやストレスをため込まない」といった、生活面での改善を心がけるようにします。
ちなみに水分摂取の量については、トイレが近くならないよう摂りすぎに注意したほうがよい場合もありますし、逆に細菌性の膀胱炎などでは水分を多めにとったほうがよい場合もあります。
症状によって対処も異なるため、医師の診察と指示に従うようにしましょう。
低周波や磁気で刺激を与える治療や、あるいは「骨盤底筋体操(こつばんていきんたいそう)」や「膀胱訓練」を行うことが効果的な場合もあります。
「骨盤底筋体操」とは、投薬をせず膣や肛門を引き締める動作を一日数十回程度行うもので、「膀胱訓練」は尿意を我慢する練習を長期間にわたって行うものです。
さらに、骨盤底筋や尿道の周囲を修復するための手術を行う場合もあります。
処方薬や漢方薬による薬物療法もありますが、症状によって投薬すべき薬の種類はまったく異なってきます。
投薬においても自己判断を避けて、専門医の診断と指示にもとづいて行うことが必須です。
頻尿は、膀胱を必要以上に収縮させるはたらきのある「アセチルコリン」という物質が、神経の末端を通じて伝えられることが原因の一端とされています。
「ウトリス」「ステーブラ」などの「抗コリン薬」は、主にこのアセチルコリンのはたらきを弱め膀胱の過剰な収縮を抑える作用があるため、過活動膀胱の治療薬としてよく用いられます。
抗コリン薬は便秘や緑内障などの副作用がありますが、最近の新薬においては副作用の発生率もかなり改善されているようです。
また頻尿(過活動膀胱)の症状改善を効能とする漢方薬として、「牛車腎気丸(ごしゃじんきがん)」「五淋散(ごりんさん)」などがよく知られており、これらは薬局においても市販されています。
なお上でも述べたように、神経性頻尿の場合は抗うつ薬や抗不安薬、鎮痛薬が投与されることがありますし、排尿時の痛みや発熱などで他の病気の併発が疑われるときは、まったく別の投薬・治療が必要となるケースも多くあります。
頻尿に関わる対処・治療は、このように症状に応じ多様なものがありますので、繰り返しになりますが「泌尿器科の早期の受診による症状の特定」が治療の出発点となります。
その後は症状に応じた治療を続けながら、疲れやストレスをためこまない・過労による体力低下を避けるようにするなど、頻尿の症状を緩和するための生活改善をあわせてはかっていくようにしたいものです。
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